本日(2010年2月24日)午前、以前から気にかかっていた場所を訪れた。それは山の家だ。カブール市内には二つの小高い岩山がある。急坂が頂上まで続いている。高さは100メートルは優に超えていると思う。その岩肌の山腹にへばりつくように、土で造られた家が山頂まで続く。遠くからみるとそれは美しい景観を見せている。それにしても人々はどのようにして暮らしているのだろうか。それが三年前に来たときからの疑問だった。それが今日氷解した。遠目から見た光景とは全く裏腹に、誠に厳しい生活を人々は強いられているのだ。 何よりも水だ。水は山頂にタンクが設置されており、そこから水道管を使って水が供給されている。といっても各家に配水されているわけではない。何箇所かに共同の水道施設があり、人々はそこでバケツに水を汲んで自宅まで運ぶのだ。こう書くと簡単そうだが、急坂でしかも道があるわけではない。岩だらけの坂を登って行くのだ。私はときどき手をつかないと登れなかった。それほど急で岩だらけの道を水の入った重いバケツを持って上がるのは本当に重労働だ。 一方、下水は垂れ流しだ。中腹から幅50センチほどのU字溝を利用した下水道はあったが、それは上から流れてくる下水をまとめて排水するためだ。しかし、その下水道は麓ではとぎれて、下水はまた垂れ流しだ。生活ゴミはそこいらじゅうに捨ててある。至るところにゴミの山があり、異臭を放っている。足元はゴミと人糞が散乱している。下水と混じり合っているために、ゴミに何度も足を取られそうになった。まさにスラム街だ。同じ光景を20年近く前にパキスタン、ペシャワルのアフガン難民キャンプで見たことがある。 物資の運搬はもっぱらロバに頼っているという。さもなくば人力だ。頂上までの家に行くには三十分はかかるだろう。老人や足の悪い人はとても暮らせない子供たちは坂をものともせずに遊びまわっている。大きな犬が泥の家の屋根で寝そべっていた。ちょっと油断すれば転落しそうな急峻な岩山に、それでもへばりついて暮らす人々のたくましさ,生への執着に、ある種の感動を覚える。 頂上からカブール市内を一望できる。誠に平和な光景だ。しかし、こんな山の上でもかつて戦闘があったという。そして今でも山上でも下界でも軍の監視は厳しく、緊張に包まれている。戦争と平和の境界はどこにあるのだろう。
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