北朝鮮が再び核実験を行った。今回の爆発規模は推定5~20㌔トン(韓国国防省)から2~4㌔トン(ヘッカー米フタンフォード大学教授)まで相当な幅がある。数㌔トンだとすれば、爆発規模が小さいから爆縮技術が未完成で十分な核分裂が起きなかったとして失敗とみる(同教授)か、それとも前回の1㌔トン未満の爆発も含めて「制御技術」のさらなる向上とみるか(田岡俊次)、意見の分かれるところである。私は、最悪に備えるという危機管理の視点からみて、後者の田岡説をとる。実験直後の朝鮮中央通信は、「~爆発力と操縦技術において新たな高い段階で安全に実施し、~」(asahi.com)と「爆発力」に続けてわざわざ「操縦技術」という文言を入れている。深読みかも知れないが、「操縦技術」とは核爆発力の制御技術ではないだろうか。もし、そうだとすれば、北朝鮮は核爆発の出力の制御技術を持っており、すなわち核兵器の小型化技術をすでに獲得したことになる。
田岡氏は、前回の核実験の際に北朝鮮が4㌔トンの核実験を行うと中国に事前通告したことを重視している。4㌔トンという出力を事前通告できるということは、すでに出力制御の技術を入手していたことになる。ただし、制御しすぎたために予想通りに出力を制御できずに1㌔トン未満の爆発に終わったというのが田岡氏の見立てである。したがって、今回は朝鮮中央通信の報道を信ずるなら、たとえ爆発出力が数㌔トンであったとしても、それは完全に出力制御に成功した上での数字ということになり、核兵器の小型化の技術が完成したとみるべきであろう。むしろ20㌔トンであったほうが、まだ安心できる。20㌔トンなら爆縮技術が完成したという基礎的レベルで、これから小型化の実験が必要ということになるからである。
仮に北朝鮮がすでに小型化の技術を獲得していたとするなら、北朝鮮はそれ以前に必要な基礎的な爆縮の技術はどのようにして獲得したのだろうか。以前このブログでも紹介したが、恐らく、それはパキスタンから入手したのではないか。北朝鮮の核開発は、パキスタンやイランとの共同開発と考えるべきであろう。北朝鮮はノドンのミサイル技術をパキスタンに、一方パキスタンは核技術を北朝鮮にと、相互に浩瀚し、両国で核ミサイルを開発したとみるべきである。だから北朝鮮の核ミサイルはパキスタンと同程度と考えるのが妥当であろう。と、すると北朝鮮の核ミサイル技術は最悪、パキスタン程度と覚悟しておく必要がある。つまり、自衛隊は事実上対抗手段がないということである。
憲法上の問題はさておいたとしてても、発射前の敵地攻撃は現在の日本の航空自衛隊の能力ではまず無理である。ノドンでは発射から日本に着弾するまでの時間は10数分である。ノドンの発射システムは車両による移動式であるため、発見が難しい。また液体燃料ではあるが、常温保存ができ、また注入後1週間から数ヶ月は燃料の劣化や燃料タンクの腐食は防げるようだ。さらに中距離ミサイルで燃料が比較的少ないために、短時間で注入ができる。その意味で運用性が高く、ミサイルそのものを発射前に発見、攻撃することは困難である。
発見するには常時監視体制をとらなければならない。しかし、日本には偵察衛星、偵察機を含め24時間常時偵察、監視する能力はない。仮に米軍との協力で発見したとしても十分な対地攻撃能力はない。現在対地攻撃能力を持つ航空自衛隊の攻撃機はF2とF4である。現在のF15Jの対地攻撃能力はきわめて限定されている。たとえミイサルを発見して緊急発信しても北朝鮮まで3~40分はかかる。帰投時には空中給油を受ける必要がある。湾岸戦争の際に米、英空軍がイラクのスカッド部隊を発見攻撃するのがきわめてむずかしかったことう考えると、日本の対攻撃能力にはあまり期待できない。また巡航ミサイルや対地ミサイルの案も出ているようだが、ミサイルは固定目標には有効であっても、移動する目標の攻撃には向かない。
要するに、日本は北朝鮮のノドンミサイルに全くといってよいくらい対抗手段はない。湾岸戦争の際に、米軍がスカッドにいかに手こずったかを考えれば。イラクのスカッドは通常弾頭だったから仮に迎撃しそこなっても被害は限定的であった。しかし、ノドンには核をはじめ化学弾頭も搭載できる。ノドンは日本にとって、すぐ底にある脅威である。
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