2011年5月6日金曜日

蓄電池の開発を

福島原発の惨事以来、代替エネルギー論争が沸騰している。ただし、原子力を代替できるだけの自然エネルギー利用電力を開発するには多くの技術的困難がある。また時間もかかる。風力発電は何十年も前から研究されているにも関わらず、日本ではいまだに代替エネルギーにならない。アメリカや中国ドイツでは日本の10倍20倍もの発電量があり十分に実用化しているとの議論もある。
技術的な問題よりも、原子力を優遇する国の政策の問題だという反原発派の主張もあるが、必ずしもそればかりが風力発電が広まらない理由ではないだろう。風力発電に否定的な技術者は電力供給が安定しない、電気の質が安定しないなどという理由を上げている。また日本で風力発電がひろがらない理由の一つは、台風だといわれる。津波や地震には強くても、台風に弱いのが風車である。事実、現在風力発電が盛んな国は、高緯度帯で台風やモンスーンが無い国や地域である。
個人的な感想だが、風力発電には私は消極的だ。景観破壊、バードストライク、低周波問題など風力発電の自然破壊もまた考慮しなければならないからだ。カリフォルニアやネバダ州にある風力発電地帯を見たことがあるが、風車が山肌に何百機も並んでいる風景は圧巻、壮観ではあるが、威圧的で異様な風景だ。近くによると低周波のせいなのか、それとも異様な口径のせいなのか、気分が悪くなる。しかし、原発に比べれば、こうした風力発電の持つ問題は取るに足らぬ欠陥かもしれないが。
自然エネルギー推進派は反原発派であり、他方消極派は原子力推進派であることが多い。そのため自然エネルギー開発の議論が日本でなかなか進展しないのは、それが原発の技術ではなくイデオロギー論争や政治論議、あるいは人生観、宗教論になってしまうからである。日本のエネルギー政策の不幸は、いつまでたっても反原発、原発推進のイデオロギー論議に巻き込まれてしまうことにある。いい加減イデオロギー論争はやめにしよう。
技術的な問題だけを取り上げて議論するなら、自然エネルギー利用電力が実用化できるか否かは、蓄電池の開発にかかっている。2008年2月に米国国家情報会議は『破壊的民生技術』(Disruptive Civil Technologies)と題する報告書を公表した。その中で社会劇的に変化させる技術の一つとしてエネルギー貯蔵技術を挙げている。この技術は、車輛、船舶、航空機等の交通手段やさまざまな携帯機器で使用するエネルギーを貯蔵し、配分する従来の方法を劇的に変革する可能性を秘めた破壊的技術である。この技術には、特に燃料電池のための電池の素材技術、ウルトラキャパシタ(超大容量コンデンサー)そして水素吸蔵合金などがある。そしてこの破壊的技術が社会や経済に与える可能性として、化石燃料からのパラダイムシフトが起こり、グローバルな変革をもたらす可能性がある。
現在の電力システムの致命的欠陥は電気を貯蔵できないことにある。せいぜいが夜間に電気を使ってダムの水をくみ上げて電気エネルギーを重力エネルギーとして貯蔵し、昼間に再び電気に変えるという非効率な電気貯蔵技術しか実用化されていない。したがって電気は常に最大需要予測にしたがって生産設備を持つ必要がある。日本の場合は、夏の晴れの日の午後2時頃、気温が最高になるころである。東京では約6000万キロワットといわれている。さらに言えば、高校野球の決勝戦がこれに重なるとテレビの使用電力が増えるためにさらに電力消費が増加するといわれる。だから今年の夏は高校野球のテレビ中継はやめたほうがよい。
この致命的欠陥を解消できる蓄電池が開発されれば、原発は全て廃棄しても十分にやっていける。自然エネルギーで少量発電した電力を貯蔵し大量に集め、そしてスマート・グリッドで効率的に配電すれば、火力発電もやめることは可能だろう。いずれにせよ代替エネルギー開発の要点は蓄電池の開発にかかっている。

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