2012年5月14日月曜日

技術「大国」日本の現実

今日(2112年5月13日)興味深い記事が『朝日新聞』に掲載された。半導体製造装置で日本勢がオランダの会社に遅れをとっているという内容だ。80年代には日本の独壇場だった半導体や半導体製造装置で今では海外勢に売り上げで大きく水をあけられているという。うかつにも、円高や人件費の高騰など経済環境の悪化が日本の半導体産業を弱体化させているとばかり思っていたが、そうではなかった。日本は技術で完敗したのだ。 半導体の露光装置ではかつてはニコンとキャノンが世界の7割に達していたが、現在はオランダのASLMが8割を占めているという。たまたま今日テレビ東京で日本のモノヅクリの特集をしていたが、その中でニコンのレンズ造りの達人を紹介していた。しかし、そのレンズが使われる露光装置ですでにニコンは経営戦略上の大きな判断ミスを犯して、せっかくの達人の技術も十分にいかせていないことがわかった。 ちなみにモノヅクリという言葉が人口に膾炙しはじめたのはここ15年のことらしい。つまり日本がデフレを脱却できず、経済でじり貧状況に陥った時に、経済力に代わる日本の新たなアイデンティティーとして技術力が叫ばれたのだろう。 たしかに日本は依然として素材技術力、部品技術力はあるのだろう。しかし、統合的な技術力は、新しいモノを生み出す創造的な技術力はあるのだろうか。以前にも記したが、その象徴はやはりソニーだ。ソニーはウォークマンで音楽文化を変えるほどの衝撃を与えた。それは技術力ではなく企画力だった。同じように技術力ではなく企画力で成長したのがアップルだ。アップルの基本技術はほとんど既存の他社の技術だ。それをうまく一つにまとめる企画力こそ、故スティーブ・ジョブズの卓越した能力だ。本当ならソニーこそがiPodやiPhoneを開発していなければならなかった。 しかし、ソニーはウォークマン以後、ジャンクな製品しか生み出していない。外国人社長を雇ったのがまちがいだったのかもしれない。一体ソニーは何の会社なのだろうか。昔、日本の三大虚業と言われたのがソニー、サントリー、西部デパートだった。バブルの頃これらの会社は夢ばかりを売っていた。その西部デパートは衰退し、ソニーもまた凋落の一途である。唯一サントリーだけが、ビールやウィスキーで一息ついている。 技術力はたしかに必要だ。その一方で新しい世界や社会を創り出す企画力が何よりも重要だ。サンリオのキティーを見習って、ソフトパワーに力を入れるべきだろう。かつて日本が米国の技術力を打ち負かし自動車産業を興隆させたように、今ではテレビ、家電製品で韓国、中国が日本を追い上げている。こうした分野での技術力競争よりもアップルのような企画力に秀でた会社をたちあげる必要があるだろう。技術大国日本というのは単なる日本人の思い上がりにすぎないかもしれない。

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