2012年8月23日木曜日

山本さんの冥福を衷心より御祈り申し上げます

 シリアのアレッポでもフリージャーナリストの山本美香さん が死亡した。心より 哀悼の意を表したい。ジャーナリストと研究者の職業の違いはあるものの、戦時下の人々の暮らしを 伝えたいという思いは同じである。  フリーのジャーナリストには政府側のビザはおりにくいのであろう。だからトルコ側の反政府勢力 の支配地域からの潜入取材に ならざるを得ないのか。であればこそ、政府側の 攻撃は覚悟の 上だったと思う。不謹慎の誹りを承知の上でいえば、本望の最後ではなかったか。  反政府勢力との内戦 でアレッポは混乱の極みのように思われている。しかし、私がダマスカスに滞在した八月上旬は、飛行機もバスも問題なく運行されていた。アレッポには是非行きたかったが、残念ながら、その前に拘束され、願いは叶わなかった。  確かに反政府勢力の攻撃は続いているが、ダマスカスの様子を見る限り、政権は安定しているように思える。  ネットは制限されていると思ったが、特に規制はかけられていない。人々の暮らしや生活にも思ったほどの 影響は表向き 見られない。流石に観光業は大打撃のようで、宿泊したホテルも閑古鳥がないていた。内戦のせいなのか、内戦による不況のせいなのかシャッターが閉じられた店を ダマスカスでは多く見た。しかし、下町の食料品を売る 市場には活気が溢れていた。多くの人にとって、戦争は社会現象ではなく、台風や地震のような自然現象なのかもしれない。  山本さんは、不謹慎だが、名誉の戦死で救われたかもしれない。彼女と一緒に取材していたトルコとパレスチナの取材人が拘束されたとの報道がある。もし、事実なら、彼らには体を横たえる空間もないような 劣悪な収容施設に放り込まれ、最悪、凄まじい拷問が加えられるだろ。女性もおそらく似たような扱いだろう。  政府側の拷問の実態は、この目で目撃した。また不法入国者の収容施設でも、スパイ容疑で秘密警察の拷問を受けた男を見た。タバコの火のあとが身体中についていた。  シリアの内戦は、アサド政権の政府軍と自由シリアの反政府軍の戦いだけではない。政府系民兵組織と反政府系の自由シリア軍、それに加担する外国民兵、テロリストなどが加わり、戦時国際法の埒外で戦われている無法の戦争である。そして両者は世界のメディアに向けた熾烈な報道合戦をも繰り広げている。この戦いで圧倒的に不利な立場におかれている政府側は反政府側から取材するジャーナリストにも容赦なく銃口を向けるだろう。まさに仁義なき戦いである。

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