2012年7月27日金曜日
節電の効果はあったのか
7月25日に財務省が2012年上半期の貿易統計を発表した。貿易収支は2兆9158億円で、過去最大の赤字となった。輸出は前年同期と比べ1.5%増加したが、輸入が7.4%増加した。結果、貿易赤字が膨らんだ。赤字の最大の要因は、「東京電力福島第1原発の事故の影響で各地の原発が停止していることで、液化天然ガス(LNG)の輸入が前年同期比で49. 2%増えたことが大きい」(『朝日新聞』7月25日夕刊東京第4版2面)。要するに節電が功を奏していないこと、また原発無しではやはり日本のエネルギーをまかなえないということを意味している。
節電は、少なくとも原発でまかなっていた電力がなくても暮らして行けるレベルにまでなってこそ意味がある。環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也氏が今でも原発がなくても電力は不足していないと主張していたが、天然ガスの輸入が増えている現状をみると彼の主張は間違っているのではないか。今後どれだけ原油や天然ガスの輸入を抑えられるかが本当に脱原発できるかどうかを左右する要点だ。
脱原発運動になると必ず新聞が取り上げるのが、電気無しでどれだけ生活できるかという記事だ。正確には記憶していないが、2~30年前にやはり原発の新設をめぐって反原発運動がおこり、反対派の一人の男性が原発に反対して電気無しの生活に戻るという記事が報じられたことがある。彼はその後も電気無しに生活をしているのか、続報はなかった。
同じようなことが今朝(26日)朝日新聞の朝刊に掲載された。若い独身の同社の記者が契約アンペアの最低5アンペアに落として節電生活を過ごしているという。契約アンペア数は年に一度しか変更が効かないので、一年間は節電生活をするつもりなのだろう。どこまで堪えられるか。反原発運動の拠点である「たんぽぽ舎」のビルでさえ大型の空調が備えつけられ、冷房を使っていた。原発のない新たな暮らしをめざしているのなら、せめて冷房は我慢すべきだろう。だから一年間はやせ我慢を通すつもりの朝日の記者には、個人的には満腔よりエールを送りたい。
ところで個人の節電には大きな抜け穴がある。それは社会全体の電力節電にはあまり役立たないということである。冷蔵庫が使えないので、結局コンビニやスーパーで冷えたビールを買うことになる。電力で冷やした物、作った物は一切口にしないというのであれば、電力の節電になるが、そうでなければ個人で消費していた電力をコンビニやスーパーに移しかえただけだ。また電気炊飯器に代えてご飯もガスでたくと美味しいといっているが、エネルギーという観点から考えれば、天然ガスで発電された電力エネルギーを使うかガスを直接使うかの差で、根本的には天然ガス・エネルギーを消費していることには代わりがない。もちろん原発で発電しないという意味はあっても、二酸化炭素の排出は増加するし、何よりも原発のない再生可能エネルギーに基づく新たな暮らしを目指すという脱原発の理念に反する。要するに原発に代えて化石燃料を使いましょうということでしかない。実際、脱原発派の論理は再生可能エネルギーが普及するまでは天然ガスを使うことになっている。
その化石燃料はほぼ全て輸入に頼っている。化石燃料を買えるだけの金が日本にあるうちは問題ないだろう。しかし、今般の貿易赤字は、日本の輸出産業が衰退していけば、化石燃料を購入する金が無くなる恐れがあることを示している。
原発によって不足した電力を補った化石燃料代分は節電しないと本当の意味での節電にはならない。脱原発派、再稼働反対派には今こそ、その覚悟の本気度が試されている。5アンペアとはいわない。原子力発電がなかった1960年代に戻って、少なくとも15アンペアまでアンペア・ダウンしてはどうか。
(補足)私は脱原発、再稼働賛成派である。脱原発は以前に書いたとおり、技術者の不足によって原発が管理できなくなる前に廃炉にすべきだということである。六ヶ所村や文殊の事故は、明らかに日本の原子力技術の低下を物語っている。フクシマ原発の事故や世論の東電バッシングを考えれば、優秀な学生がいまさら原子力高額を学び、また東電に入射するなどありえない。外国人技術者やアレバのような外国企業に廃炉を請け負ってもらう前、日本人技術者がいる間に廃炉にしなければならない。
再稼働に賛成するのは、稼働しても止めたままでも、地震に対する危険性にはさほど変わりはないからである。フクシマ4号機を見ればわかるが、同機は運転を停止し、炉心から燃料棒は引き抜かれて冷却プールに入れられていたのである。それが、今では最も危険な状況にある。燃料棒はどこにあろうと熱を出し続け、その危険性は炉心であろうが燃料プールであろうが変わらない。であれば再稼働して、化石燃料の輸入を減らした方が現実的である。
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