2009年6月28日日曜日

民主党の安全保障政策

 民主党がいよいよ政権を奪取しそうだ。だからだろうが、アメリカでも民主党の安全保障政策に不安を覚える声が高まりつつある。議会でハーバード大学のジョセフ・ナイ教授をはじめいわゆる知日派の人々からは、民主党が政権を取れば日米同盟に摩擦が起きかねないいとの懸念がしきりにマスメディアに流されている。
 民主党が取るべき戦略は、米国に見捨てられないようにこれまで以上に米国に「思いやり」をかける「勝ち馬戦略」をとるか、あるいは日米中の正三角形による対等な関係を結ぶ「勢力均衡戦略」をとるか、あるいはまた国連や東アジア共同体を重視する「多国間協調戦略」のいずれかである。「勝ち馬戦略」は自民党主流派の政策であり、また民主党では長島昭久、前原誠司ら親米派が主張している。対米独立的な「勢力均衡政策」は自民党では加藤紘一ら非主流派、民主党では親中派が主張している。国連重視は小沢一郎、アジア共同体構想は鳩山一郎、アジア非核地帯構想は岡田克也の主張である。ところで民主党はいずれの戦略をとるのか。政策原案集を見ても、いまだに不明瞭だ。
 大国と同盟を結ぶ小国には常に見捨てられ論と巻き込まれ論の二つの恐怖がつきまとう。冷戦時代のように米ソ核戦争に巻き込まれる恐れはなくなったものの、今もなお自民党は見捨てられないようにできる限り米国に思いやりをかけるべきだと主張している。しかし、冷静に考えてみれば、安全保障環境は9.11同時多発テロ以後激変している。96年の再定義で「アジア・太平洋の平和と安定に欠かせない」はずの日米安保は、米中の戦略的協力関係に取って代わられようとしている。日本の最大の脅威である北朝鮮の核問題も北朝鮮には対米、対中問題でしかない。日本の最大の外交カードである経済力も中国に追い抜かれるのは必至だ。強いと自惚れていた自衛隊の戦力も憲法9条で自縄自縛の上に防衛予算の実質的な削減で弱体化しつつある。今や日本の安全保障上の地位はアジア・太平洋でも国際社会でもじり貧状態にある。
 このような安全保障環境の下で民主党がいずれの戦略をとるにせよ、実は憲法改正かもしくは集団的自衛権の解釈の変更による、より積極的な安全保障政策は避けられない。民主党親米派の「勝ち馬戦略」に基づく対米関係強化政策はアフガンをはじめ国際紛争で日本がどれほど軍事的な対米協力ができるかにかかっている。それは自民党以上の「思いやり」政策となる。対米自主独立派の「勢力均衡戦略」に基づく日米中正三角形政策は、対米、対中との勢力均衡を図るためになおのこと日本の軍事力の強化が求められる。鳩山由紀夫代表の祖父鳩山一郎ばりの改憲、軍備強化が必要だ。また「多国間協調戦略」に基づく小沢一郎代表代行の国連重視政策では国連憲章第41条、42条に基づく自衛隊の海外派遣を覚悟しなければならない。さらに同戦略に基づく鳩山代表の東アジア共同体構想や岡田幹事長の北東アジア非核地帯構想では、北朝鮮、中国、ロシアの核保有国と対等に交渉しようとすれば、潜在的核兵器開発可能国として日本はそれなりの覚悟を決めなければならない。北朝鮮はもちろん中国やロシアが核放棄や核軍縮、非核地帯化について非核国の日本を対等な交渉相手国とみなすことなどありえないからだ。
 今こそ民主党は、見捨てられるかもしれないと怯える自民党の臆病なタカとなるよりも、獰猛なハトとなって「百万人といえども我ゆかん」の自主独立の気概をもって憲法を改正し集団的自衛権を明確にし、日米安全保障条約の再々定義により対米軍事依存から脱却し、アメリカの核の傘から出るために少なくとも脱兵器化核武装を宣言し、国連憲章第41条、42条、43条に基づき国連軍への自衛隊参加を明言し、それらの政策を実践する覚悟を決めなければならない。それが民主党が責任ある政権与党となる唯一の方策である。

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