2009年6月7日日曜日

朝日と産経の差のない対北朝鮮政策

 昨日(2009年6月6日)日本の対北朝鮮政策について対照的な記事が朝日と産経に掲載された。一見全く真逆の見解のようでいて、実は両記事とも本質的に同様の政策、すなわちいかに米国との同盟を強化するかという対米政策の強化を主張しているにすぎない。
 朝日も産経も程度の差こそあれ、自民党を中心に一部の議員が主張している「敵基地攻撃論」に否定的である。では日本にはどのような政策があるのか。朝日の社説はこう主張する。「北朝鮮の脅威が深刻であればあるほど、米国との信頼、近隣国との結束を固めるべきだ」。一方産経の「くにのあとさき」(湯浅博)は西ドイツがパーシング2を導入したように、日本も「米国核」を導入せよと主張する。そして「日本が巡航ミサイルを持つにしろ、『米国傘』導入の検討にしろ、米国との協調なくしては成り立たない」と続ける。期せずして、普段なら意見が対立することが多い両紙が同じ日に対米協調を主張したのである。
これは、もはや対北朝鮮政策では対米協調以外に打つ手がないという日本外交の手詰まりを如実に示している。
 たしかに、北の核保有そして北の核保有を利用しながら対米交渉や対アジア戦略を進めている中国外交を考えれば、一見、最後の頼みの綱は米国以外にないように思われる。しかし、外交はギブ・アンド・テイクの関係である。日本がいくら対米協調を望んだところで一体日本は何をギブできるのだろうか。両紙とも具体的にどのようにして対米協調をはかるか、具体的な提案は全くない。
 冷戦時代ならソ連や中国に対する前方展開基地として日本は戦略的価値があった。しかし、今や戦略的価値は著しく低下している。では苦境にある米国経済への支援ということになるのだろうか。とはいえ米国の自動車産業を壊滅に追い込んだのは日本だし、また米国債を買い支える役割も中国に奪われている。残るは沖縄の普天間基地移設問題の早期解決や米軍のグアム移転費用の負担増加ということになるのだろうか。しかし、民主党が政権をとれば、こうした対米思いやり政策は白紙撤回されるだろう。
 そもそも、冷戦時代のような安全保障を事実上金で買うような同盟関係のあり方はもはや通用しない。同盟とは、相手のためにともに血を流す関係である。日本は流さないが、アメリカには流してもらうというご都合主義的関係を精算しないかぎり、米国の核の傘も開かなければ、米兵が日本のために血を流すということもないだろう。
 オバマ政権が日本に望むのはアフガニスタンでの日本の協力だろう。北の核の脅威に備えて、対米協調を望むのなら、直近の政策としては、憲法改正は間に合わないからせめて憲法解釈を変更して集団的自衛権を認めて米国の対アフガン政策に協力するのが最も適切ではないだろうか。その上で、長期的には以前にも述べた日本の脱核兵器化核武装政策をとるのがよいと思うが、いかがだろうか。

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