2009年9月1日火曜日

憲法9条を実践せよ

 民主党が政権を取ったことで憲法改正は当分遠のいた。朝日新聞(9月2日朝刊)の調査によると、民主党の改憲賛成派議員が50パーセントから16パーセントに減ったために、自民党の改憲派とあわせても憲法改正の発議に必要な三分の二に届かない、という。また民主党内の旧社会党やリベラル派などの左派勢力や、社民党との連立の可能性を考えるとサヨクバネが働いて、集団的自衛権の解釈変更も難しくなるだろう。それどころか鳩山政権が政策マニフェストでインド洋での自衛隊による給油活動を継続しないと明言している。
自民党の改憲論議や安保政策を批判するばかりであった民主党もいよいよ現実的な安保政策の策定が求められることになった。それは民主党だけではない、いわゆる護憲勢力も同じだ。いよいよその言葉では無く、実行が試されることになった。
 これまでの護憲勢力の運動の全てが、改憲反対、憲法9条を守れ、という反政府運動を展開していれば事足りた。しかし、前述のように憲法改正は事実上不可能になった。集団的自衛権の解釈変更もきわめて困難となり、また鳩山政権の反米自主独立路線を考えると、自衛隊が国際協力で海外に出る機会も減るだろう。つまり民主党政権の誕生で、憲法改正や自衛隊の海外派兵を阻止するという護憲勢力の目的は成就できたのである。ではこれから憲法9条の会など護憲勢力は何を目的として運動を展開するのだろうか。今こそ、憲法9条、より正確には憲法前文の実践が求められるのではないか。
 ここであらためて憲法前文を読み返してみよう。
 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」(1946年11月3日公布)
 戦後60有余年、いわゆる平和勢力は改憲反対、憲法9条を守れという反自民、反政府の内向きの護憲平和運動を展開してきた。しかし、自民党が崩壊した現在、そうした内向の護憲平和運動も自民党の崩壊とともに、瓦解した。今、平和勢力に問われているのは、護憲ではなく、憲法前文に書かれた憲法の実践である。
 具体的には、これまでもブログで主張してきたように、戦後の平和運動を担い、そして今では民主党政権を支える「連合」が主体となって、非武装・非暴力の連合PKO(憲法9条部隊)を編成して、アフガニスタンに行くべきである。特別措置法による自衛隊のインド洋給油活動は明らかに憲法違反であり、民主党が給油活動の継続に反対するのは全く正当である。だからこそ、そして憲法前文の精神を実践するためにも、自衛隊の代わりに連合の組合員を中心に民間人で非暴力平和隊(憲法9条部隊)を編成してアフガニスタンに数千人規模で隊員を送り込むべきである。連合の組合員数は600万人といわれる。そのうちの1000人に一人が志願すれば、6000人の部隊ができる。連合だけでなく志願制の自衛隊と同じように広く国民に呼びかけて隊員を募集すれば、平和を愛する日本国民の多くが志願、瞬く間にその規模は倍増するだろう。また国民全員が協力するという意味で、消費税を一パーセント上げて国際協力の目的税として使用してはどうか。国際平和のために1パーセントの消費税率をあげることに反対する国民は誰一人としていないだろう。また民主党も反対しないだろうし、社民党も反対することないだろう。法案は簡単に衆参ともに国会で賛成多数で成立する。
 憲法9条部隊は、一切の護衛をつけることなく、アフガニスタンをはじめ世界各地の紛争地に赴き、教育、医療、運輸、建設など連合組合員からなる隊員の専門を活かして紛争の解決、社会の復興にあたるのである。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」いるが故に、他国民から危害が加えられることは無い。万、万一危害が加えられ、仮に殉死することがあったとしても、それは平和に殉じた平和の聖徒として国際社会から深い尊敬の念をもって称賛されるだろう。犠牲者を祀る慰霊施設を新たに建設し、靖国神社に代わって全国民が参拝できるようになする。
 こうした自己犠牲的な非暴力平和活動こそが、平和日本の安全保障上のソフトパワーとなり、軍事力というハードパワー以上に日本の安全と平和を守るソフトパワーとなるだろう。米国をはじめ多くの国が武力を行使する中で多くの兵士を犠牲にしてきた。これに対して日本は狡いという批判がこれまでもあった。しかし、日本は血を流す覚悟があることを憲法9条部隊で示すのである。
 今まで日本人は、幸いにも海外で一発の銃弾も撃っていない。たとえ自らの身を守るためであっても、これからも一発の銃弾も撃つべきではない。かつてガンジーは、たとえ何十人、何百人、何千人、何万人が犠牲になったとしても、非暴力を貫けと教えた。憲法前文は日本国民に徹底したガンジー主義の非暴力による平和の実践を要請しているのである。
 護憲派の諸君、今こそ立ちあがれ。そしてアフガニスタン、フィリピン、スーダン、イラク、ソマリアなど世界各地の紛争地にでかけ非暴力で暴力と戦え。もう自民党本部や国会にデモをする必要はない。写経のように憲法前文や9条を書き写し、暗記している場合ではない。実践あるのみだ。

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