2014年3月18日火曜日

河野・村山談話の継承を支持する

安倍首相が2014年3月14日の参議院予算委員会で、河野談話を見直さず、村山談話も継承することを明言した。アメリカから相当な圧力があったと思うが、賢明な判断だと思う。 慰安婦問題では国内世論と国外の世論とでは完全に論点が異なっており、見直しをすれば完全に日本の信頼は失墜する。少なくとも慰安婦問題は、国際社会では女性の人権問題であって、軍の強制性の有無の問題ではない。戦前の公娼制度(より広義には徒弟奉公制度)そして何よりも慰安所そのものが否定されており、公娼制度や軍の慰安所を認めた政府、それを利用した軍が人権蹂躙として批判されているのである。 公娼制度は、身売りという事実上の人身売買と、年季奉公という事実上の奴隷労働から成り立っている。国連でもアメリカでも慰安婦問題が非難されているのは、慰安婦問題が人身売買と奴隷労働の問題だからである。戦前においても、1904年の「醜業を行わしむるための婦女売買取締に関する国際協定」や1910年の「醜業を行わしむるための婦女売買禁止に関する国際条約」で売春や人身売買を禁ずる国際協定が締結されており、日本も1925年に批准した。にも関わらず日本では公娼制度が存続したのである。英米では19世紀末に公娼制度は廃止されている。河野談話や村山談話を否定することは、公娼制度を容認することであり、人権侵害を肯定することと受け止められかねない。 昔と今は違うという、見直し派の議論は通用しない。軍の強制性があろうがなかろうが、女衒によって人身売買で売春婦にさせられ、軍の慰安所で性的奴隷労働を強いられたという事実、そしてそうした制度を政府や軍が容認していたことが問題なのである。慰安婦問題を追及している中央大学の吉見義明氏も最初は軍の関与や強制性を問題にしていたが、今では慰安所制度そのものに論点を移している。 慰安所や慰安婦の存在は厳然たる事実であり、国際社会ではその事実が批判されている。もはや文書の有無の問題ではない。慰安所については『兵隊やくざ』を見ていた世代なら誰もが知っている事実である。それが突然問題視されるようになった背景には現代の人権意識の高まりがあるのだろう。 今の人権意識で過去の問題を非難すべきではないという議論もあろう。しかし、昔と今は違うからと言って、今アメリカで黒人奴隷は仕方がなかったなどと言おうものなら、人種差別主義者としてアメリカ社会から抹殺されてしまう。それと同じで、今アメリカで慰安婦は仕方がなかったなどと言えば、完全に信頼を失ってしまう。慰安婦問題はすでに議論の余地のない人権問題であって、これを見直すというのは、そのこと自体が人権無視と思われてしまう。アーミテージのような親日派でも、慰安婦問題について日本に厳しいのは、慰安婦問題が人権問題そのものだからである。 だから安倍首相が河野、村山談話を継承すると明言したことは、日本が人権を重んじる国家であるということを内外に示す良い政策判断であった。慰安婦問題で反省を示した上でで、日本政府が取るべき政策は、「慰安婦20万人」等のプロパガンダをただし、現在の人身売買や奴隷労働の撲滅に向けて積極的な貢献を示すことである。そうすることで中国や北朝鮮の人権蹂躙を非難できる倫理的に優位な立場に立つことができる。 繰り返すが、慰安婦問題は過去の軍の強制性の問題ではなく、現在の人権問題である。安倍政権がこの問題で積極的な対応をすれば、安倍政権に対するアメリカの疑念は払しょくされ、集団的自衛権の容認以上に日米同盟を強固にし、韓国の反日運動を形骸化させるだろう。

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